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【高校】科学部地学班 工事現場での馬門石の露頭観察会を実施!

国交省や工事関係者の許可を得て、令和7年5月12日(月)に馬門石の分布調査を行うことができました。

馬門石とは

馬門石とは、馬門石とは、宇土市網津町馬門に分布することでよく知られる赤い凝灰岩です。

約9万年前、阿蘇のカルデラ噴火により噴出した阿蘇火砕流堆積物(Aso-4)からなる溶結凝灰岩で、多くは灰色をしています。
馬門に分布するものは赤色をしていおり、阿蘇ピンク石ともよばれます。

馬門石は地域に親しまれ、様々なところに用いられています。
宇土市、特に馬門地区では、神社の鳥居や網津川眼鏡橋群など、多くの場所で見ることができます。

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大歳神社

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牧神社

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馬門橋(網津川眼鏡橋群の1つ)

今からおよそ1500年前の古墳時代には、瀬戸内から畿内にかけての特に有力な権力者の棺に用いられるなど、大変貴重な石でした。

江戸時代には、細川藩の御用石となっています。

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現代の石切場の様子(2023年撮影)

地学班の馬門石に関する研究

この馬門石が「赤い理由」について、2022年度から研究を行っております。

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研究初期の調査の様子

(参考: 【高校】科学部地学班 馬門石(まかどいし)の分布調査 | |UTO| 熊本県立宇土中学校•宇土高等学校

馬門石が赤い原因を考えるにあたり、赤い馬門石と黒い通常のAso-4の分布から分かるのではないかと考えました。

ただ、表面は草や木が茂っているため、地表面の岩石は簡単には調べられません。

これまでは、民家の裏の露頭を見せてもらったり、用水路や沢を上りながら流水に侵食され露出した部分を調べたりしていました。

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用水路での調査の様子

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用水路の底に見られる馬門石の様子

連続的に見ることができないため、パズルのピースをつなぎ合わせるような作業を行い、表層地質図や柱状図としてまとめ、何とかして、赤い馬門石と黒いAso-4の分布の全体像をイメージしてきました。

工事現場での馬門石の露頭観察会

現在、馬門地区では、地域高規格道路「熊本天草幹線道路」の一部を形成する宇土道路の工事が行われています。

今回は、工事を進める国交省と工事を行う企業さまの研究に対するご理解とご協力をいただき、工事で露出した大規模な露頭を見せてもらうこととなりました。

宇土道路 国土交通省 九州地方整備局 八代河川国道事務所

今回の工事現場での露頭観察会には、宇土市教育委員会をはじめ、地域の議員さんや馬門石の石工さん、そして、テレビや新聞などのマスコミなど、多くの方々が参加しました。

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北側壁面付近での露頭観察の様子

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北側壁面付近での露頭観察の様子

露頭を見ると、「コの字型」に大規模掘削されており、地質を連続的かつ立体的に観察することができました。

観察結果と研究成果

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東側壁面の様子

現在の石切場の馬門石は、薄いピンク色をしていますが、この露頭中の馬門石は、赤味が強く、黒曜石のレンズが見られないため、大変良質な馬門石であることが分かります。

宇土市教育委員会の方の話によると、実際、近畿地方に運ばれた馬門石などの石切場の一つが、この地点だと考えられているそうです。

確かに、露頭をよく見ると、馬門石の上位には、角ばった馬門石が礫状に堆積していることが分かります。恐らく切り出し、加工された際に不要となった石材が積み上げられたものでしょう。

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西側および北側壁面の一部の様子

今回の露頭観察から、黒いAso-4の中に赤い馬門石は大きさ10mほどの塊状に散在しており、境界面は漸移していることが分かりました。
これは、これまでの調査の結果と同じで、露頭で連続的に見ることができたことは大変貴重だと思います。

赤い馬門石と黒い通常のAso-4の分布については、これまで詳細な調査をされていないため、今回、両者の分布や境界面の様子を立体的に観察できたことの意義は大きいです。

今のところ、室内実験や岩石の成分分析、野外での観察や今回の分布調査の結果から、赤い原因は、ヘマタイトFeO3の形成の有無であり、この形成の可否は、「高温」と「酸素」によるものではないかと考えています。

研究内容は、5月25日に行われる「日本考古学会(筑波大学で開催)」と「日本地球惑星科学連合大会(幕張メッセで開催)」にてポスター発表を行い、専門家と議論する予定です。

石工さんが使った道具

観察会後は、清田さん(馬門石の石工さんのお孫さん)から当時石工さんにより使われていた道具類を見せてもらいました。

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馬門石の石切り、加工に用いられた道具類(馬門地区在住の清田さんより)

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道具を用いて割られた馬門石(左・中:赤味が強い、右:うすいピンク色)

謝辞

今回、このような馬門石の露頭観察会を行うことができ、感謝しております。

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掘削された馬門石のサンプルを採集する様子

工事をされている国土交通省九州地方整備局八代河川国道事務所や佐藤企業株式会社、宇土市教育委員会、地域の議員さんや馬門石の石工の道具を見せてくださった清田さんなど、関係者の皆様にこの場を借りて感謝申し上げます。

マスコミ報道

今回の観察会の模様は、様々なマスコミで報道されました。今後、報道されたものも順次追加掲載する予定です。

テレビ報道

①KKT 令和7年5月12日(月)放送

9万年前の噴火でできた岩「馬門石」科学部の高校生たちが調査(2025年5月12日掲載)|KKT NEWS NNN

②RKK 令和7年5月12日(月)放送

なぜ赤い?『馬門石』 宇土高校の科学部がその謎に挑む 熊本 | 熊本のニュース|RKK NEWS|RKK熊本放送

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